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The Dish 月のひつじ

オーストラリア映画 (2000)

アポロ11号の月面歩行時のTV中継の重責を担ったオーストラリアのパークス天文台の直径64メートルの可動式電波望遠鏡をめぐる実話の映画化。その中で、カール・スネル(Carl Snell)はマッキンタイア町長の息子ビリー役で、ちょっぴり顔を見せる。それでも、エンド・クレジットの最後に、Intorucingで名前が出されるので、完全な端役という訳でもない。カールの登場場面は、アポロ11の打上げ、天文台長との食事、月面歩行時とそれらの中間の計6回。あらすじでは、そのうち5回を紹介する。彼が全体のストーリーに絡む訳ではないので、その他の部分はキーとなる2ヶ所のみを簡単に紹介する。

当時、南半球随一の大きさを誇ったパークスにある直径64メートルの可動式電波望遠鏡は、地球と月の位置関係から、人類初の月面歩行のTV中継の電波を捉える基地局として選ばれる。オーストラリア以外の国では、電波がどこで捉えられようと、アポロ計画の実行主体であるNASAに注目が集まっていたが、地元オーストラリアでは羊しかいないようなパークスの天文台が急に国内の注目を集め、地元の町の人々も興奮する。そうした中、主演のサム・ニールが所長を務めるパークス天文台では、緊張感と使命感をもって大仕事に備えていた。それを危機に陥れたのが、①町がアメリカ大使を招いた歓迎行事で電気を使い過ぎて停電が起こり、天文台も停電し、アポロ宇宙船の追跡データが消えたこと、②肝心の月面歩行時のTV中継が近づいた時、望遠鏡の稼動限界の風速15メートルの倍近い強風に襲われたこと、の2点。パークスの天文台が月面歩行をTV中継したのは事実だが、①は映画の虚構、②は事実。ついでに言うと、首相は映画と違いパークスには来ていない。

カール・スネルは、ごく普通の少年。町長の息子で、アポロ計画にもすごく興味を持っているという設定。オーストラリアのTVドラマの子役として活躍し、2004年を最後に俳優をやめている。


あらすじ

アポロ11号の打上げを控え、町の集会所はパーティーの真っ最中〔入口には「いよいよ打上げ」との横断幕が〕。町長をはじめ多くの町民が集まり盛り上がっている。打上げまで間があるので、TVの前で中継を見ているのはビリーだけ。そんなところに父が近づいていき、一緒にTV画面を見る。「今、どんなだ、ビリー?」。「液体水素が入ったところ」。「それって、直せないのか?」。「違うよ、打上げの準備が完了したんだ」。「ああ、水素か」。これは、町長が何も分かっちゃいないことを示すシーン。その後、感慨深げに「人が月に立つんあだな」と言うと、ビリーが「そうだよ、パパ、僕らも一役買ってるんだよね」。「一役じゃなく、その ど真ん中にいるんだぞ」(1枚目の写真)。液体水素注入時の最後の問題が解決したのは打上げ1時間30分前なので、打上げまではまだ相当待たなければならない。いよいよ打上げが近づき、TVの前に全員が集まる。打上げシーンはTマイナス1分前から。打上げに詳しいビリーが、ヒューストンの管制官より前に、「Guidance is internal」〔電源や慣性航法装置の宇宙船内部への切り替え〕と口ずさむ。さらに、「Ignition sequence starts」〔点火シーケンス開始〕。最後に「0」までいき、「All engines running」〔全エンジン点火〕、「Liftoff」〔離昇〕。食い入るように見るビリー(2枚目の写真)。1969年7月16日13時32分UTCのことだ。UTCは協定世界時、アメリカの現地時間では9時32分、TVを見ているオーストラリアでは23時32分になる。
  
  

アポロ計画に1人熱心なビリーが、大した事件もない途中でもTVに見入っている(1枚目の写真)。アナウンサー:「アームストロング、オルドリン、コリンズが歴史的な任務に出発してからほぼ19時間が経ちました。今は、どの辺りでしょう?か」。解説者:「現在、宇宙飛行士たちは、地球から15万キロ離れていて、月まで、まだ23.6万キロあります」。ビリーとは関係ないが、この後に、パークス天文台の巨大な「Dish(皿)」〔映画の原題〕が、地面すれすれの60度まで下がった場面があるので、2枚目の写真で紹介する。この角度で、月からの電波を受信する。なお、天文台の付近には羊がいて、それが意味不明の日本語題名の由来だ(と思う)。
  
  

次は、解説にも書いたように、実際には起こらなかった停電のシーン。アメリカ大使を迎えて町の集会所で盛大なパーティが行われている。電気を使いすぎて町中が停電する(1・2枚目の比較写真)。天文台もあおりを受けて停電。本来なら予備の発電機で機能は停止しないはずだが、所員のミスで動かなかったため、すべての装置が遮断・停止し、アポロの追跡データも失われてしまう。パークスからヒューストンへの信号が途絶えたことに対し、ヒュートンからの問い合わせがあり、その際、所長は、「ヒューストンへ、こちらパークス。(アポロからの)受信状態は良好。中継に問題があるのでは?」と嘘をつく(3枚目の写真)。通信の回復までには相当の時間を要したが、嘘がバレる前に、「宇宙船は月に向かっているので、パラボラを月に向けて少しずつ動かしてアポロからの信号を受信する」方法(4枚目の写真)で何とか通信の再開に成功する。天文台の名誉のため、何度も書くが、これは実際には起こらなかった作り話。
  
  
  
  

町長が、天文台長とNASAの担当者を自宅の夕食に招く。ビリーが、「全校生徒が見るんだよ」と言うと、父が「世界中の学校が見るさ。何人くらいになると思う?」とビリーに訊く。NASAの担当者は「6億人です」と答える〔この数値は正しいが、正確には、直接TV中継を見る人だけでなく、メディアを通してみる人も含まれている〕。町長が、「NASAが最初にここに来た時、TVは二の次だと言ってましたな」と担当者に言うと、「状況が変わったんです。私も、無事に生還すること以上に重要なことがあるかもしれないと…」。宇宙飛行士の命より、この町で中継する月面着陸のTV映像の方が大事かも、という外交辞令だ。それを聞いて笑う家族とビリー(1枚目の写真)。家族に見送られて所長とNASA担当者は 満足して帰っていく(2枚目の写真)。
  
  

月面着陸の行われる7月21日(オーストラリア時間)の夜明け前、父とビリーは、司令船から分離した着陸船イーグルが月に向かって降下を開始する態勢に入ったというアナウンサーの声を、ラジオで聞いている〔早朝でTVの放送時間外のため〕。顔を見合わせて微笑む2人(1枚目の写真)。そして、朝6時17分40秒(オーストラリア時間)、僅か残り25秒分の燃料を残して、着陸船イーグルは静かの海に無事着陸する。「ヒューストン、こちら静かの海基地。イーグルは舞い降りた(Houston, Tranquility Base here. The Eagle has landed)」は、あまりにも有名な言葉だ。町長宅では、TVの前で、父とビリーがかじりつくように見ている。アナウンサー:「確認がとれました。アームストロングとオルドリンは、今、月面にいます。2人はEVAの準備に入りました」。父:「何だって?」。ビリー:「宇宙船外活動だよ」(2枚目の写真)。結局2人は、一睡もしなかったのであろう。アームストロングが月面に足を下ろすのは、12時56分(オーストラリア時間)なので、6時間は休息が取れることになる。
  
  

天文台では、新たな問題が持ち上がっていた。こちらは、歴史的な事実だが、風速が次第に強くなってきたのだ。直径64メートルもある皿が強風を受けると、全体が吹き飛ぶ恐れがある。そのため、稼動限界は風速15メートルとされていた。しかし、風はそれを超えて強くなっていく(1枚目の写真)。この写真では、パラボラは真上を向いている。これが、稼動していない時の安定姿勢だ。そこに、ヒューストンから、船長が船外活動を早めたいと言っているという情報が入る。次いで、アメリカのゴールドスートン(Goldstone)からの中継が途絶えたので、中継を即刻頼むという至急要請も入る。刻々勢いを増す強風の中で、所長は全員の合意を受けてパラボラを月に向ける決断をする(2枚目の写真)。
  
  

パラボラが地面すれすれに下がり月を捉えると、TV画像が入ってくる。大勢の町民が集会所に集まりTV画像を見守っている。アームストロングが月面に一歩を記し、あの不朽の名言「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である(That's one small step for man, one giant leap for mankind)」が聞こえる(1枚目の写真)。ビリー:「パパ、彼、月にいるんだ」(2枚目の写真)。
  
  

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